平和 

文・写真:高橋正和

沖縄の備瀬という場所に滞在しています。

来月9日に札幌のパトスで行われる公演のレジデンスに同行させてもらっているのです。
香港から京劇の役者のChoさんと、コンテンポラリーの振り付けでも活躍しているBoさん、日本人振付家のゆっぴさん、シンガポールから参加のREMONさん・・うそ。
真面目に楽しく作品つくりにいそしんでおります。(僕以外は)

そんな中、唐突に以前、琴似の劇場コンカリーニョの設立当初、文化庁の調査で質問されたことを思い出しました。
「何のために劇場運営をやっているのですか?」
自分「世界平和のためにやってます。何千、何億とある世界平和を実現するための方法の一つとして舞台があるのです。」と

ここは沖縄です。多分今、日本国内では最も平和じゃない場所。最も多くの武器、軍人が存在しているところ。他県から警察や機動隊が乗り込んできているところ。そういう場所なのです。

その土地で、過去に遡れば大きな暴力、戦争を行った両国の人間が一つの舞台に向けてのクリエーションを行っているのです。この文章を書いている今この時、この場所では暴力や嘘、好戦的な空気はもちろんありません。しかし同時刻、すぐそこでまったく真逆なことが行われているという事実が頭から離れないのです。・・・それは沖縄だけではなく例えばシリア、アフガニスタンではもっと凄惨な事実が存在するのでしょう。同じ空の下です。同じ海に囲まれた土地でです。
ここで僕は世界平和を声高々に叫ぶことはありません。僕は思います。クーラーのない公民館の舞台で汗をだらだら流しながら踊る、クリエーションしているBoさん、Choさん、レモンさん、ゆっぴさんの姿こそが道なのだと。そう思うのです。両国の伝統芸能と今、皆が共に紐解き、創りあげる行為、少しずつ心打ち溶け、友人として永遠に心がつながっていく姿は真に「平和」なのです。分かち合い、分かり合い、奪うことなく互いに尊敬し、与えることを惜しまないこと。それらがとても自然に一つの目標に向かって進んでいく手段であること。その目標は・・「平和」なのではないかと思うのです。全ての人間が進むべき道なのではないかと思うのです。

すべての事柄は繋がっています。何一つ関係のないことなどありません。30日には備瀬の人々と関わります。それから札幌に飛びクリエーションの続きそして公演。日々の結果は出ることのない答えの過程でもあります。絡まりあうなかにある一つの「点」にしかすぎません。しかし「点」は確かにそこにあって、決して無くならないのです。「点」はどこにでもあるように見えて唯一無二のものなのです。
僕はその「点」が少しでも輝けるように努力をするためにここにいるのだなぁ。

追伸
心ある唄、モノ・コトは素敵です。
先ほどの出来事でした。