はじめに

那覇―備瀬―札幌
アジアの身体を見つめ直す旅―伝統から現代を往来する。


ダニエル・ユン氏に会いに香港に飛んだ。15年ぶりの再会。2002年、京都とインドネシア・ソロでのAIRプログラムに、招聘アーティストとして参加してもらって以来だ。空白の長い時間は秒速で埋まり、私たち小規模なアジアの現代舞台芸術には、人力や予算を協力協同しながらプログラムを実現していくことが必要だという、真面目な話を熱く語り合った。

さらに話は続き―― 同じアジア諸国である香港と日本には、欧米から多くを学び影響を受け、現代舞台芸術の今のかたちをつくってきたという共通点がある。けれどこれからは現代作家の視点から、私たちアジアの芸能舞踊や風習・多くの見逃していたかもしれない財産を捕らえ直していくことで、未来が開けるのではないか、と。アジアの身体を見つめ直す旅、そんなAIRプログラムの構想が、旧知のダニエルとの会話から見え始めた。

今回のAIRプログラムに、ダニエルが推薦してくれた香港の振付家CHOさんは、古典芸能・京劇の代表的な作品『三岔口』からモチーフを切り取り、現代人の身体性・虚構と現実に惑わされ見失いつつある魂の行方をダンス作品としてアプローチしていく。共同制作パートナーとして、香港から京劇俳優、日本から民族芸能の研究や振付に携わっている表現者が参加し、この4名でアジアの伝統から現代を航海していく。

そのためのレジデンス地域に選んだのは、沖縄と札幌。最南から最北へ移動する。
沖縄は琉球舞踊や組踊りなどの伝統芸能が息づき、いまでも日常生活と祭事儀式がつながりを持つ土地、なくなってほしくない貴重な神事の残る島。同時に、現代社会の混沌がはっきりと見える場所―ここで、アジアの身体を見つめなおしたいと思う。

気温が10度以上異なる最終地―札幌では、沖縄という異文化の地でのレジデンス成果を発表する。
予測不能なAIRで、アジアの身体をみつめ、発見する旅に向かう。

プログラム・ディレクター:水野立子